人は生まれた時から大なり小なり、成長したい、学びたいという思いを本能的に求めます。それはやりたい、なりたいが主体とした考えを元々持っているからです。
その何か目的、目標に向かって進もうとする時の支えとなるものの手法としてティーチングやコーチングが使われています。
まず、ティーチングとコーチングの大きな違いは、クライアントが「受動的」であるか「自発的」であるか、というところにあります。
「受動的」では、直接的な考え方や方法、スキルなどを教えてもらうことで、実際にどのように問題を解決するのか、考えつつも答えを得て、具体的に導いてもらうことです。
「自発的」というのは、質問などの刺激を受けることで、感情、思考、の変化を自覚しながら自分に問いかけることで「気づき」を得ていく。そして自らの方法を考え出していくことになります。
コーチングとティーチングの違い、それぞれの特徴と共通点を理解することで、シチュエーションによって効果的に使い分け、併用しながら使うことが人の成長、学びをサポートをするのに最適となります。
それでは具体的にティーチングとコーチングについてお伝えしていきます。
目次
1、ティーチング(教育)とは
知識、技術、経験を持った人が指示を出したり、教えたりすることです。
例えば学校教育、会社内組織による人材育成、生涯学習といった場で行われるコミュニケーション方法です。
1-1 学校教育では
心身の発達、能力の発達段階を考慮した内容を教える場であり、日本国憲法、教育基準法という教育の主軸とした教育方法です。知識、考える力だけでなく、日本人としての考え方、また、人間社会で大切な、共に支え合う人と人とのコミュニケーション力も学んでいきます。
1-2 企業内教育では
業務に求められる能力を向上させるための教育として、知識、技術、思考を付与するための教育が行われます。また、企業内社会人として仕事する上で必要な共通認識、知識、規範、考え方を浸透させることや、個人だけでなく、チームとして最大のパフォーマンスを発揮させるために、思考と行動を導く指導も行われます。
1-3 家庭教育では
全ての教育の原点でもある家庭内での教育の場であり、無償の愛が基盤となる教育です。
ふれあいを通して、身体的成長、基本的な生活習慣、生活能力、自分または人に対する信頼感、感性、思いやり、倫理観、自立を育む力を育てていきます。
1-4 これらを大きく3つの場面をふまえでのティーチングのその他の特徴
1、基本的な知識を得ることが最大目的であること。
2、ティーチングは教える側が話の中心になり、時間の大
半は一方的なコミュニケーションとなっていること。
3、先生、上司からの評価を受けることも多くなります。
4、教える側の理念を軸とした内容、方向性になります。
5、1対多数でのことが多くなります。
2. コーチングとは
コーチングとは、対話することで、クライアントの夢や目標を実現するために相手の現状、可能性、具体的な目的を引き出し、「本当はどうしたいのか」「本当にありたい状態」「ありたい関係」「ありたい姿」を明確化し、行動を促すサポートのことを言います。
2-1 特徴
コーチングの大きな特徴は「答えやリソースはすでにクライアント自身が持っている」という考え方を軸にセッションを進めていくことです。
2-2 効果的に進めるために大切なこと
お互い信頼関係をベースに、目的に向かって協力し合い、理解し合い、思いを深めながら共に進めていくというパートナーシップがあるということです。
2-3 コーチとクライアントの定義
1対1で行われることが主になります。
コーチ
目的、目標を達成に向けて、クライアントが主体的に
取り組み行動することを促す、サポートをする人。
クライアント
望む状態に向けてコーチングを受ける人
または団体。
達成に向けコーチと共に努力する人。
2-4 コーチングが有効な場
◉ 企業の業績を上げたい経営者、管理職。
◉ 企業内のチーム、部下のパフォーマンス、コミュニ
ケーションの質を高める。
◉ 個人的な目的、目標の実現。それに伴う問題、課題の
解決、解放方法を見つける。
◉ スポーツでは個人、またはチームで最大のパフォーマ
ンスを上げ良い結果を出す。
◉ 家庭内での親と子のコミュニケーション。
◉ 教育の場
3. ティーチングのメリット、デメリット
3-1 ティーチングのメリット
ティーチングのメリットは、相手に対して、求める成果、目標を達成させるために、知識や技術をしっかり教えることで、共通の認識、価値観、スキルの統一した教育をすることが出来ます。そしてある程度の成果も得ることができます。
なんの知識もスキルもない状態から独学で学び得ていくのは時間もかかり非効率なことです。ですので、経験の少ない人に対して基礎知識やスキルを教育するときに効果的です。
教えられたものをヒントにアイデアが湧いたり、気づきを得ることで、学んださらに先へと意欲が湧いて、発展させたり、深めることができます。
また、ティーチングは一方的なコミュニケーションですので、大人数に対して一度に学ばせることが出来ます。
3-2 ティーチングのデメリット
ティーチングのデメリットは一人一人の持っている資質や、考えを細かく理解することが出来ないため、見過ごしてしまったり、可能性を広げる機会を逃してしまいがちです。
受動的なため、自主性が自立が育ちにくく、指示待ち状態や依存的傾向の人材を育ててしまいがちです。
また、ティーチングをする側の知識やスキル、経験によって得るものの質の影響を受けるので、それ以上のものを目指すことが難しくなるというデメリットもあります。
4. コーチングのメリット、デメリット
4-1 コーチングのメリット
コーチングの最大のメリットは主体性を持って自ら考える力が身につき、
目的、目標に向けてどうしたら良いのか解決する能力が高くなります。
コーチの関わりのよって、自分の内側から出てきた感情思考によって意思決定したことは、自然と行動も自発的になり、積極的な行動へと変化していきます。
そしてこの思考、行動を習慣化することで、目標達成までモチベーションを保つことが出来ます。
じっくりと1対1で向き合うことで、クライアントの可能性、リソース、価値観を引き出すことができます。このことは、クライアントが自信を持って、積極的に目的、目標に向かって行動する大きな力となります。また、個性を活かすことにも繋がります。
常にコーチはどんな時も勇気づけてくれる存在であり、そんなサポートがあるからこそ、諦めずに進み続けられるということも大きなメリットと言えます。
4-2 コーチングのデメリット
コーチングのデメリットは自主性を育むことに重点を置いていることから、ある程度時間がかかるという点です。
また、クライアントがまだ知識や経験が薄い場合、無理に引き出そうとしても機能しないばかりか、苦痛を感じさせてしまったり、自信を無くしてしまっては、勇気付けと真逆のことになり、目標に向かおうというモチベーションが下がってしまっては元も子もありません。
そして何よりクライアント自身が「変わろうとしない」「達成したい」という積極性を持っていない場合にもコーチングは機能しなくなります。
5. コーチングとティーチングの使い方
場面やその時々のクライアントの状況を見ながらティーチングとコーチングをうまく使い分けて取り入れることが効果的な成果を生みます。
例えば、
初めての学びを始めたクライアントに対して、やはり、基礎知識はティーチングしなければなりませんが、一方的な教えだけなく、「なぜ?」「どう考える?」「具体的には?」ということをコーチングの関わりで質問したり、聴いたりすることで、クライアント自身に考えさせ、違った視点での物の見方を促します。このように、知識やスキルを得たことをベースにさらに自らの気づき、答えや具体的行動へと繋がる働きかけとなることが大切です。
6. まとめ
大切なことは、コーチングとティーチングのことを理解した上で、最もクライアントに有効な関わりは何だろうか、と常に考え、クライアントを信じ、感じながら共に進むことです。
そしてコーチングもティーチングも信頼関係があってこそ最大の効果を発揮するものだということです。
これまでの教育では受動的な学びが多く、疑問を持つこともなく、あまり考えない、指示されることに慣れている状態です。学校だけでなく、職場でも教えてもらっています。つまりティーチングは今までの環境で自然に学んだスキルなのです。
そしてコーチングは自発的行動を促すために、「なぜ?」「どういうことなの?」などの質問、対話によるコミュケーションです。「聴く」一つをとっても、ただ相手の話を聴くのではなく、その時のクライアントの「感情は?」「何が聞こえ見えているのだろうか」「思考はどんな状態だったのか」全身で感覚を研ぎ澄まし、自分の認知を脇に置き、聴き切れるか。。このスキルを身につけるには、経験値を高めなければなりません。今までとは違うコミュニケーションだからこそ、学ぶ必要があります。
GlassenTree Aoi